スロベニアの赤ワイン

スロベニアの赤ワイン

【スロベニアの赤ワイン・三つの丘陵地帯と生産者たちの情熱を巡るものがたり】

 今回は、プリモルスカ、ポドラウィエ、ポサウィエという三つの主要産地に焦点を当て、それぞれの赤ワインの魅力、気候、使用品種、そしてそれらのワインを造り出す生産者たちの情熱に迫ります。スロベニアワインの奥深い世界をご堪能ください。

スロベニアワインについてご興味がある方は、こちらの  「スロベニアワインとは?」 の記事もご覧ください。

プリモルスカ(Primorska):アドリア海の風が奏でる、地中海系赤ワインのシンフォニー

スロベニアの西端、イタリアとの国境に位置するプリモルスカは、アドリア海の恩恵を受ける温暖な地中海性気候が特徴の生産地です。石灰岩質の丘陵地帯が広がり、多様なテロワールがワインに複雑さと深みを与えています。このプリモルスカは以下の4つの主要地区に分類できます。

プリモルスカの主要産地

ゴリシュカ・ブルダ(Goriška Brda:

イタリアのフリウリ地方と地続きのこの地域は、スロベニアワインの最高峰とも言えるエリアです。なだらかな丘陵地が広がり、複雑な土壌がワインに深みを与えます。丘の上に村や果樹園がある点や、地形が類似していることから、この地域は「スロベニアのトスカーナ」とも呼ばれています。

ヴィパヴァ(Vipava:

プリモルスカ地方の最西端に位置し、強い風が吹き抜けるヴィパヴァの谷は、ブドウ栽培に適した独自のミクロクリマを持っています。この地に吹く風は、病害を防ぎ、ブドウの健全な生育を促します。この産地は、西のノヴァゴリツァから東はヴィパヴァまで、非常に東西に長い形で広がっています。

クラス(Kras):

石灰岩の台地が広がるクラス地域は、昼夜の寒暖差が大きく、ブドウに凝縮感を与えます。テラロッサと呼ばれる赤土が特徴で、レフォシュク種のブドウが多く植えられています。レフォシュク種はカベルネ・ソーヴィニヨン種とブレンドされることもよくあります。

 

スロベニア・イストリア(Slovenska Istra:

プリモルスカ地方の最南端、アドリア海沿岸に位置し、温暖な海洋性気候で、フレッシュなスタイルのワインを生み出します。

 

 

プリモルスカの使用品種と特徴:

 

プリモルスカの赤ワインは、地中海性気候の影響を強く受け、ふくよかでスパイシーな風味を持つのが特徴です。単一品種で造られるワインもありますが、複数の品種をブレンドすることで複雑な味わいを表現することも多く、そのバランスは秀逸です。

 

レフォシュク(Refošk:

プリモルスカを代表する黒ブドウ品種で、濃い色調に豊かなタンニン、そしてブラックベリーやプルーンのような黒系果実の風味が特徴です。酸味も豊かで、長期熟成にも向いています。テロワールによってその味わいは大きく変化し、特にクラス地方で造られるレフォシュクは、ミネラル感とスパイス感がかなり強く感じられます。そしてレフォシュク種は温暖な気候を好み、乾燥した環境でよく育ちます。この点でアドリア海からの風は、ブドウを乾燥させ、病害を防ぐ役割も果たします。

 

シノニム:

イタリアではレフォスコ(Refosco)と呼ばれており、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州では重要な品種で、「レフォスコ・ダル・ペドゥンコロ・ロッソ(Refosco dal Peduncolo Rosso)」など、複数のクローンが存在します。

 

メルロー(Merlot):

世界的に有名な黒ブドウ品種で、プリモルスカでは、温暖な気候の影響を受け、リッチでふくよかな味わいのワインに仕上がります。プラムやブラックチェリーのような果実味と滑らかなタンニンが特徴で、ブレンドのベースとして使用されることが多い一方で、単一品種でも高い品質のワインが造られます。温暖な気候を好み、水はけの良い土壌でよく育ちます。プリモルスカでは、特に日当たりの良い斜面で栽培されています。

 

カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon):

同じく世界的に有名な黒ブドウ品種で、プリモルスカでは、構造のしっかりとした、カシスやブラックベリーの風味を持つワインが造られます。タンニンが豊富で、長期熟成にも向いており、他の品種とブレンドした際には、骨格を形成する重要な役割を果たします。温暖な気候を好み、日照量の多い場所でよく育ちます。プリモルスカでは特に石灰岩質の土壌で栽培されることが多く、ワインにミネラル感を与えます。

 

カベルネ・フラン(Cabernet Franc:

カベルネ・ソーヴィニヨンの親品種で、プリモルスカでは、よりエレガントで、ラズベリーやカシスの風味、ハーブのニュアンスを持つワインが造られます。タンニンは比較的穏やかで、ブレンドによって複雑さと繊細さがもたらされます。温暖な気候を好み、プリモルスカでは特に粘土質の土壌で栽培されることが多いブドウ品種です。

 

ピノ・ノワール(Pinot Noir:

エレガントで繊細なスタイルの赤ワインを生み出す品種で、プリモルスカでは比較的冷涼な地域で栽培され、チェリーやラズベリーの風味、土やキノコのようなニュアンスを持つワインが造られます。単一品種で造られることが多く、そのテロワールを表現したワインはブルゴーニュのピノ・ノワールを彷彿とさせます。冷涼な気候を好み、日照量が適度な場所でよく育ちます。プリモルスカでは特に標高の高い斜面で栽培されています。

 

テラン(Teran):

クラス地方固有の品種で、レフォシュクのクローンとも言われています。濃いルビー色で、酸味が非常に強く、鉄分やミネラルのニュアンスが特徴です。若い時はやや荒々しい印象を受けますが、熟成すると複雑さを増します。クラスのテロワールを代表する品種です。温暖で乾燥した気候を好み、粘土質の土壌でよく育ちます。

 

 

プリモルスカの代表的な生産者:

 

Movia(モヴィア):

ゴリシュカ・ブルダを代表するトップ生産者で、伝統的な手法と革新的なアイデアを融合させ、高品質なワインを造り出しています。特にオレンジワインのパイオニアとしても知られています。赤ワインではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、ピノ・ノワールを使用したものが有名です。

 

Marjan Simčič(マリヤン・シムチッチ):

ゴリシュカ・ブルダを代表する生産者で、テロワールを重視したワイン造りが特徴です。国際的にも高い評価を受けており、メルローを主体とした赤ワインは複雑でエレガントな味わいです。

 

Edi Simčič(エディ・シムチッチ):

ゴリシュカ・ブルダに位置し、高品質なワインを造っています。有機農法・自然農法による自然派ワインとして知られており、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを使用した、しっかりとした骨格の赤ワインが特徴です。

 

Ščurek(シュチュレク):

ゴリシュカ・ブルダの家族経営の生産者で、自然なアプローチでブドウを栽培し、レフォシュク、カベルネ・ソーヴィニヨンなどから、テロワールを最大限に表現したフレッシュかつフルボディのワインを造り出しています。

 

Kabaj(カバイ):

ゴリシュカ・ブルダの生産者で、国際品種から土着品種まで幅広く手がけ、高品質なワインを造っています。スロベニアワインの中でも自然派ワインの代表格で、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンなどを使用した赤ワインは、複雑でエレガントな味わいが特徴です。

 

 

 

ポドラウィエ(Podravje):パンノニア平原の恵み、エレガントな赤ワインの舞台

 

スロベニア北東部に位置するポドラウィエは、パンノニア平原の一部であり、大陸性気候の影響を受ける地域です。なだらかな丘陵地が広がり、ブドウ栽培に適した環境を提供しています。白ワインの産地としても有名ですが、赤ワインも少量ながら高品質なものが造られています。ポドラウィエは以下の2つの主要地区に分かれます。

 

 

ポドラウィエの主要産地

 

シュタイエルスカ(Štajerska):

オーストリアのシュタイアーマルク州と接しており、白ワインの名産としても知られています。

 

プレクムリェ(Prekmurje):

ハンガリーと国境を接し、大陸性気候の影響が強く、寒暖差が大きい地域です。

 

ポドラウィエの使用品種と特徴:

 

ポドラウィエの赤ワインは冷涼な気候の影響を受け、エレガントで繊細な味わいが特徴です。単一品種で造られることが多く、品種の個性を最大限に引き出しています。特にオーストリア原産の品種がこの地域で力を発揮しており、その繊細な味わいは国際的にも注目を集めています。

 

ツヴァイゲルト(Zweigelt):

オーストリア原産の黒ブドウ品種で、ポドラウィエでは冷涼な気候の影響を受け、酸味が豊かで、チェリーやラズベリーといった赤い果実の風味が特徴のワインに仕上がります。タンニンは比較的穏やかで、軽やかなスタイルです。若いうちから楽しめますが、数年の熟成にも耐えられます。冷涼な気候を好み、日照量が適度な場所でよく育ちます。ポドラウィエでは丘陵地の斜面で栽培されることが多く、この地形がブドウの成熟を促します。

 

ブラウフレンキッシュ(Blaufränkisch):

オーストリア原産の黒ブドウ品種で、ポドラウィエではスパイシーでハーブのようなニュアンス、ブラックベリーやダークチェリーの風味が特徴のワインに仕上がります。タンニンが豊富で、しっかりとした構造を持ち、長期熟成にも向いています。シュタイエルスカで造られるものは、ミネラル感が強く、より複雑な味わいです。冷涼な気候を好み、水はけの良い砂利やロームの混ざった土壌で栽培されることが多いブドウです。

 

ピノ・ノワール(Pinot Noir):

エレガントで繊細なスタイルの赤ワインを生み出す品種で、ポドラウィエではチェリーやラズベリーの風味、土やキノコのようなニュアンスを持つワインが造られます。ポドラウィエのピノ・ノワールはブルゴーニュスタイルに近いと言われ、その繊細さが特徴です。日照量が適度な場所でよく育つことから、丘陵地の斜面で多く栽培されています。

 

 

ポドラウィエの代表的な生産者:

 

Valdhuber(ヴァルトフーバー):

シュタイエルスカの生産者で、ピノ・ノワールやブラウフレンキッシュを使用した赤ワインは、極めてエレガントで繊細な味わいを生み出します。この地域が赤ワインに非常に向いている地域であることを証明しています。

Valdhuber(ヴァルトフーバー)のワインはこちらから

 

Pullus(プルス):

シュタイエルスカを代表する生産者で、モダンなアプローチから高品質なワインを造っています。ピノ・ノワールやブラウフレンキッシュなどを使用した赤ワインは、エレガントで味わいのバランスが取れています。

 

 

Pullus(プルス)のワインはこちらから 

ポサウィエ(Posavje):丘陵地帯の隠れた名産地、個性的な赤ワインの万華鏡

 

スロベニアの南東部に位置するポサウィエは、サヴァ川とその支流が流れる丘陵地帯です。半大陸性気候の影響を受ける地域でブドウ栽培に適した環境が広がっています。土着品種のワインが中心で、多様なスタイルが楽しめます。ポサウィエは以下の3つの主要地区に分かれています。

 

 

ポサウィエの主要産地

 

ドレンスカ(Dolenjska:

ヴァ川沿いの丘陵地帯で、スロベニア最大のワイン産地です。比較的温暖な気候で、ブドウ栽培に適した地形を有しています。

 

ベラ・クライナ(Bela Krajina):

クロアチアと国境を接しており、独自のブドウ品種が栽培されます。この地域はかなり内陸部に位置することから、非常に寒暖差が大きいことで知られています。

 

ビゼルスコ・スルメリッチ(Bizeljsko Sremič:

スロベニアとクロアチアの国境沿いの丘陵地帯で、スパークリングワインの生産も盛んです。

 

 

主要な使用品種と特徴:

 

ポサウィエの赤ワインは、地域ごとに異なる個性を持ち、多様性に富んでいます。土着品種のワインが中心で、他の地域では見られない独特のスタイルが特徴です。またスパークリングワインの生産も盛んで、赤ワインを使ったスパークリングワインも造られています。

 

モドラ・フランキンジャ(Modra Frankinja):

ポサウィエを代表する黒ブドウ品種で、スパイシーでハーブのようなニュアンス、ブラックベリーやダークチェリーの風味が特徴です。タンニンが豊富で、しっかりとした構造を持ち、長期熟成にも向いています。ドレンスカ地域で造られるものは、よりフルーティーで親しみやすい味わいになります。冷涼な気候を好み、水はけの良い丘陵地の斜面で栽培されることが多くなっています。

 

ジャメトウカ(Žametovka):

ポサウィエの土着品種で、世界最古のブドウの樹としても知られる品種です。淡い色調で赤系果実の風味、繊細なタンニンが特徴。軽やかで飲みやすいスタイルですが、熟成によって複雑さを増します。ベラ・クライナ地方で造られるものが特に有名です。涼しく、日照量が適度な場所でよく育ちます。

 

 

ポサウィエの代表的な生産者:

 

Colnar(コルナール):

ドレニスカを代表する家族経営のワイナリー。メルロー、モドラ・フランキンジャ(ブラウフレンキシュ)から作られるワインは、エレガントで親しみやすい味わいです。ブドウの栽培にはバイオダイナミック農法による自然派ワインを訴求しているのが特徴で、CO2排出ゼロのワインセラーを完備するエコワイナリーです。

 

Šuklje(シュクリェ):

クロアチアとの国境付近に位置する家族経営のワイナリーで、モドラ・フランキンジャ(ブラウフレンキシュ)を使った赤ワインを得意としており、軽やかでフルーティーな味わいが特徴です。

 

Prus(プリュス):

モダンなアプローチで高品質なワインを造っているワイナリー。モドラ・フラウキンジャ(ブラウフレンキシュ)を使用した赤ワインは、しっかりとした骨格を持ちます。

 

 

 

いかがだったでしょうか?
今日はスロベニアの三つの主要産地、プリモルスカ、ポドラウィエ、ポサウィエの赤ワインについて考えました。
プリモルスカの赤ワインは、豊かな果実味とスパイシーな風味が特徴で、力強い料理との相性が抜群です。
またポドラウィエのエレガントな赤ワインは、繊細な料理や和食などとも合わせやすく、その洗練された味わいは多くの人々を魅了します。
さらにポサウィエの個性的な赤ワインは、スロベニアの食文化を理解するための鍵となり、その素朴で親しみやすい味わいは多くの人々に愛されています。

 

スロベニアの赤ワインは、まだ世界的には十分に知られていませんが、非常に高いポテンシャルを有しています。
それぞれの地域が持つテロワールと、ブドウ品種の個性を最大限に引き出したワイン造りは、世界中のワイン愛好家を魅了するでしょう。
このコラムを通して、スロベニアワインの世界にさらに興味を持っていただけたなら幸いです。
スロベニアは白ワインが有名ではありますが、是非この機会に赤ワインも味わってみてください。
その多様性と奥深さに、きっと驚かされるはずです。
そして、それぞれの生産者が持つ情熱とテロワールへの敬意が、ワインを通して感じられるはずです。

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