スロベニアのオレンジワイン

スロベニアのオレンジワイン

スロベニアのオレンジワイン:琥珀色の革命により表現されたテロワール

 


ワインの世界には、時に伝統と革新が交錯し、新たな地平を切り開く潮流が生まれます。近年その最たる例と言えるのが、「オレンジワイン」の復活です。白ブドウを赤ワインのように醸造するという、一見すると異質なこの手法は、単なるトレンドではなくテロワールや歴史、そして生産者の情熱が複雑に絡み合った、深淵なワインの世界を私たちに示してくれます。

今回はそんなオレンジワインの世界でも、特に注目すべき産地の一つスロベニアに焦点を当てて、その魅力を紐解いていきたいと思います。

 

スロベニア:オレンジワインの隠れた聖地

スロベニアは、ヨーロッパの中央に位置する小さな国ですが、多様なテロワールと長いワイン造りの歴史を持っています。特に西部のプリモルスカ地方(Primorska)はイタリアとの国境に接し、アドリア海に面した地域で、石灰質の土壌と温暖な地中海性気候が特徴です。この地域では古くからオレンジワイン造りが行われてきましたが、その品質と多様性が注目されるようになり、世界的なオレンジワインの産地として認知されるようになりました。

 

オレンジワインとは?

オレンジワインとは、白ブドウを原料に、果皮や種子を一緒に漬け込んで赤ワインのように醸造するワインのことです。この製法によって、白ワインにはないタンニンや複雑な風味、ひいては琥珀色やオレンジ色の独特な色合いが生まれます。オレンジワインは「スキンコンタクトワイン」「アンバーワイン」とも呼ばれ、その起源は数千年前に遡るとされています。

 

スロベニアにおけるオレンジワインの歴史と現状

スロベニアはオレンジワインの伝統が深く根付いている国の一つです。特にイタリアとの国境に接するプリモルスカ地方のゴリシュカ・ブルダ地区では、古くからオレンジワインの製法が受け継がれてきました。

スロベニアにおけるオレンジワイン造りのルーツは、19世紀以前の伝統的なワイン造りにあります。当時は白ワインと赤ワインの区別があまり明確でなく、白ブドウも果皮ごと醸造するのが一般的でした。その伝統が、現代のオレンジワイン造りへと繋がっています。

近年、世界的に自然派ワインが注目される中で、オレンジワインへの関心も高まってきました。その中でもスロベニアのオレンジワインの造り手たちは、伝統的な製法を守りながらも、より高品質なワイン造りに取り組んでおり、国際的なワインコンテストでも高い評価を得ています。


主要なスタイル分類

スロベニアのオレンジワインは、大まかに以下の3つのスタイルに分類できます。

伝統的アンフォラスタイル

これは最も古くから続くスタイルで、テラコッタ製のアンフォラ(クヴェヴリ型)を使用し、長期のマセラシオンを行うのが特徴です。

モダンクラシックスタイル

こちらはステンレスタンクやオーク樽を使用し、マセラシオン期間を比較的短く抑えた、よりクリーンでフレッシュなスタイルです。

ハイブリッドスタイル

上記2つのスタイルを組み合わせたもので、アンフォラとその他の容器を併用したり、マセラシオン期間を調整したりするなどして、造り手の個性が色濃く反映されます。

自然酵母の使用

ほとんどの造り手は自然酵母を使用し、ブドウ本来の風味を最大限に引き出すように努めています。

無ろ過、無清澄

多くのオレンジワインはフィルターをかけずにボトリングされるため、にごりや澱が見られます。これはワインの自然な状態を尊重する造り手の姿勢の表れです。


スロベニアのオレンジワインの製法

スロベニアのオレンジワインの製法は、以下のとおりです。

ブドウの選定

スロベニアのオレンジワインでは、主にフリウリ・ヴェネツィア・ジュリア地方でも栽培されているリボラ(Ribolla Gialla)、ピノ・グリージョ(Sivi Pinot)、ソーヴィニヨン・ヴェール (Sauvignon vert)などの白ブドウ品種が使用されます。これらの品種は果皮の風味が豊かで、オレンジワインの複雑な味わいを引き出すのに適しています。

マセラシオン(果皮浸漬)

収穫したブドウは破砕された後、果皮や種子とともにタンクやアンフォラ(テラコッタ製の壺)に入れられ、数日から数ヶ月間浸漬されます。この期間に果皮からタンニン、色素、アロマが抽出され、ワインに複雑さと深みが与えられます。

発酵

マセラシオン後、自然酵母によって発酵が行われます。温度管理は比較的緩やかで、自然な発酵を促すのが一般的です。

熟成

発酵後、ワインはタンクや樽、アンフォラなどで熟成されます。熟成期間は、造り手やスタイルによって異なり、数ヶ月から数年に及ぶこともあります。

ボトリング

熟成後、ワインはフィルターをかけずにボトリングされるのが一般的です。これにより、ワイン本来の風味や複雑さが保たれます。


スロベニアのオレンジワインの特徴

スロベニアのオレンジワインは、以下のような特徴を有しています

琥珀色、オレンジ色、濃い黄金色など、バラエティ豊かな色調を持っています。

香り

複雑なアロマを持ち、ドライフルーツ(アプリコット、オレンジピール)、ナッツ(ヘーゼルナッツ、アーモンド)、スパイス(クローブ、シナモン)、ハーブ(カモミール、セージ)、蜂蜜、紅茶などの香りが感じられます。

味わい

タンニンがしっかりと感じられ、骨格のある味わいです。酸味は穏やかで、複雑な風味が長く持続します。

質感

口に含むと、滑らかで、とろりとした質感を感じます。

ポテンシャル

熟成に対するポテンシャルが高く、数年〜数十年熟成させることで、さらに複雑な味わいを楽しむことができるワインもあります。


他国のオレンジワインとの違い

スロベニアのオレンジワインは、他国のオレンジワインと比較して、以下のような違いが見られます。

ブドウ品種

スロベニアでは、リボラ、ピノ・グリージョ、ソーヴィニヨン・ヴェールなど、独自のブドウ品種が使われます。これにより、他国にはない独特の風味が生み出されます。

製法

スロベニアの造り手は、アンフォラの使用、自然酵母、無ろ過など、伝統的な製法を重視する傾向があります。その結果、より自然で複雑な味わいのワインが生まれます。

スタイル

スロベニアのオレンジワインは、比較的タンニンがしっかりした熟成に適したタイプも多いですが、一方で繊細かつエレガントなタイプもあり、多様なスタイルがあります。

 

スロベニアのオレンジワインは、伝統的な製法とテロワールの個性が融合した、独特な魅力を持つワインです。その複雑な風味、豊かなアロマ、そして個性的なスタイルは、世界中のワイン愛好家を魅了し続けています。スロベニアのオレンジワインを味わう時に、歴史や文化、造り手の情熱までも感じることができるでしょう。


スロベニアのオレンジワインの特徴:テロワールが語る多様性

スロベニアのオレンジワインの味わいは、そのテロワールとブドウ品種によって大きく異なります。銘醸地プリモルスカ地方の各地域に焦点を当てながら、具体的な特徴を見ていきましょう。

 

ブルダ(Brda):エレガンスと複雑さ

テロワール 

ブルダは、イタリアのフリウリ地方と地続きであり、石灰質の土壌が広がる丘陵地帯です。温暖な気候とミネラル豊富な土壌が、ブドウに複雑なアロマとエレガントな酸味を与えます。

ブドウ品種

レブラ(Rebula)は、ブルダを代表する白ブドウ品種で、オレンジワイン造りに最適です。この品種から造られるオレンジワインは、柑橘系の香りに加え、蜂蜜やナッツのニュアンスを持ち、長い余韻が特徴です。他にもピノ・グリ(Pinot Grigio)やソーヴィニヨン・ヴェール(Sauvignon Vert)、フリウラーノ (Friulano)なども使用され、それぞれに異なる個性を放ちます。

特徴

ブルダのオレンジワインは、繊細でエレガントなスタイルが多く、長期熟成にも耐えうるポテンシャルを持っています。

有名生産者

Kabaj(カバイ)

伝統的な手法と最新技術を融合させ、アートとも評される、洗練された芸術的なオレンジワインを造っています。特にカバイ・レイヴァン(Kabaj Ravan)は洗練されたバランスと上品な酸味が特徴のオレンジワインで、非常に人気があります。

Klinec(クリネツ)

ゴリシュカ・ブルダに位置する家族経営のワイナリーで、レブラ(Rebula)のポテンシャルを最大限に引き出した自然派のオレンジワインを造っています。中でもクリネツ・レブラ(Klinec Rebula)は、ブドウの個性をストレートに表現した、テロワールの味わいをダイレクトに感じることができるオレンジワインです。


ヴィパヴァ(Vipava):アロマティックとフレッシュさ

テロワール

ヴィパヴァはアルプス山脈からの冷涼な風が吹き抜ける谷で、多様な気候が存在します。そのため、作られるワインもさまざまなスタイルに及びます。土壌は泥灰土や砂質土壌が中心となっています。

ブドウ品種

マルヴァジア(Malvazija)、ソーヴィニヨン・ヴェール(Sauvignon Vert)、ピノ・グリ(Pinot Grigio)などが使われます。これらの品種は、オレンジワインに華やかなアロマとフレッシュな酸味を与えます。

特徴

ヴィパヴァのオレンジワインは、アロマティックでフレッシュなスタイルが多く、軽快な口当たりが特徴です。

有名生産者

Guerila(ゲリラ)

ビオディナミ農法を実践する生産者で、テロワールを重視した自然派ワイン造りを行っています。その中でもゲリラ・ザリア(Guerila Zaria)は ソーヴィニヨン・ヴェールの華やかな香りがあり、フレッシュな酸味が魅力のオレンジワインです。


クラス(Kras):ミネラルと滋味深さ

テロワール

クラスは、石灰岩のカルスト地形が特徴的な地域で、照り返しの強い日差しと乾燥した気候が特徴です。土壌は薄く石灰岩がむき出しになっている場所も多く、厳しい自然環境です。

ブドウ品種

ヴィトフスカ(Vitovska)という地場品種が主に使われます。

特徴

クラスのオレンジワインは、ミネラル感が強く、滋味深い味わいが特徴です。

有名生産者

Zidarich(ジダリッチ)

クラスのテロワールを追求する生産者で、ヴィトフスカを使用したオレンジワインは、そのミネラル感と複雑さで高い評価を得ています。特にジダリッチ・ヴィトフスカ(Zidarich Vitovska)は、クラスのテロワールをストレートに表現した、ミネラル感と滋味深さが魅力のオレンジワインに仕上がっています。

Skerk(スケルク)

家族経営のワイナリーで、ヴィトフスカのポテンシャルを最大限に引き出したオレンジワインを造っています。中でもスケルク・オガルデ(Skerk Ograde)は、ヴィトフスカの個性を活かした、複雑で奥深いオレンジワインです。


スロベニアのオレンジワイン:ジョージアとの比較

オレンジワインといえば、ジョージアのクヴェヴリ製法が有名です。スロベニアとジョージアのオレンジワインには、共通点も多い一方で、異なる点も多く見られます。

共通点

果皮との接触

両国とも、白ブドウを赤ワインのように果皮とともに発酵させます。これにより、タンニン、色、複雑なアロマが抽出されます。

伝統的な製法

どちらも、古代から伝わる伝統的な製法を尊重し、自然なワイン造りを重視しています。

相違点

クヴェヴリ

ジョージアでは、クヴェヴリという素焼きの甕で発酵・熟成を行うのが一般的ですが、スロベニアでは、木樽やステンレスタンクを使用することが多くなっています。

ブドウ品種

ジョージアでは、ルカツィテリ(Rkatsiteli)やムツヴァネ(Mtsvane)などの地場品種がよく使われますが、スロベニアでは、レブラ、マルヴァジアなどの品種が中心です。

スタイル

ジョージアのオレンジワインは、タンニンが強く、より複雑で野性味のあるスタイルが多いのに対し、スロベニアのオレンジワインは、より洗練されたスタイルが多く、エレガントで繊細な味わいなのが特徴です。

熟成期間

ジョージアのクヴェヴリワインは、数ヶ月から数年と長期にわたる熟成を行うことが多いですが、スロベニアでは、数週間から数ヶ月程度であることが一般的です。


オレンジワインを楽しむためのヒント

最後に、スロベニアのオレンジワインをより楽しむためのヒントをいくつかご紹介します。ワインを選ぶ際には、以下の点を参考にすると良いでしょう。

スタイル

どんなスタイルのオレンジワインを飲みたいかを考え、自分の好みに合わせて選びましょう。

ブドウ品種

興味のあるブドウ品種から選ぶことができます。

造り手

造り手の哲学や製法を知ることで、より深くワインを楽しめるでしょう。

ラベル

ラベルの情報から、ワインのスタイルや特徴を読み解いてみるのも良いでしょう。

試飲

可能であれば試飲をしてみて、自分の好みに合うワインを見つけることができます。

温度

オレンジワインは、白ワインよりも少し高めの温度、12℃~16℃程度で飲むのがおすすめです。冷やしすぎると、アロマや風味が十分に感じられなくなってしまいます。

グラス

オレンジワインには、白ワイン用のグラスよりも、少し大きめのグラスがおすすめです。グラスの中でワインをゆっくりと回すことで、複雑なアロマをより楽しむことができます。

ペアリング

オレンジワインは、様々な料理と相性が良いですが、特にスパイスの効いた料理やエスニック料理、チーズ、ナッツなどとの相性が抜群です。

熟成

スロベニアのオレンジワインの中には、長期熟成にも耐えうるポテンシャルを持つものもあります。熟成することで、より複雑なアロマや風味が生まれます。


まとめ:スロベニアのオレンジワインの未来

スロベニアのオレンジワインは、単なるワインではなく、その土地の歴史、文化、そして生産者の情熱が詰まった、琥珀色の宝石です。その多様なテロワールから生まれる、繊細で複雑な味わいは、一度味わうと忘れられない体験になるに違いありません。そして今まさに、スロベニアのオレンジワインはポテンシャルを開花させつつあります。伝統的な製法を尊重しながらも、新しい技術やアイデアを取り入れ、テロワールの個性を最大限に表現しようとする生産者たちの情熱が、素晴らしいワインを造りだしているのです。

今日はスロベニアのオレンジワインについて、地域ごとの特徴、ブドウ品種、有名生産者、おすすめワイン、そしてジョージアなど他国のオレンジワインとの比較を交えながら解説してみました。今後も世界中でさらに多くのワイン愛好家がスロベニアのオレンジワインに魅了され、その地位は確固たるものになっていくでしょう。ぜひ手に取り、味わい、その奥深い世界に触れてみてください。新たな発見と感動が、あなたを待っているはずです。

 

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