スロベニア料理とスロベニアワイン
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スロベニア料理とスロベニアワインのマリアージュ:主要都市の名物料理の数々ともに
スロベニアは、アルプス山脈、地中海、カルスト台地、パンノニア平原といった多様な地形と気候に恵まれ、バラエティ豊かな食材とワインを生み出しています。その地理的特性は、隣接するイタリア、オーストリア、ハンガリー、バルカン諸国の影響を受けつつも、独自性を確立する要因となっています。このコラムではスロベニアの主要都市における名物料理と共に、それらに寄り添うスロベニアワインのマリアージュをソムリエの視点を交えながら解説していきます。是非お楽しみください。
リュブリャナ (Ljubljana) 首都の洗練された味わい
リュブリャナは、スロベニアの首都であり、政治・経済・文化の中心地です。リュブリャナ川が流れ、美しい建築物が立ち並ぶ旧市街は、食においても洗練された魅力を持っています。
チーズシュトルクリ
シュトルクリは様々な具材を薄い生地で巻いて、茹でたり焼いたりした伝統料理で、甘いものからしょっぱいものまで、様々な種類があります。その中でもカッテージチーズを詰めたチーズシュトルクリは、リュブリャナを代表する人気料理です。
チーズシュトルクリと相性が良いワインと言えば、プリモルスカ産マルヴァジアを挙げることができます。このワインはフレッシュな柑橘系の香りと、ほのかな塩味を伴うミネラル感が特徴で、チーズのクリーミーさとマルヴァジアの爽やかさが、口の中で心地よいハーモニーを生み出します。
またポドラウィエ産シルヴァーナーとの相性も良好です。このワインは繊細なハーブの香りと穏やかな酸味が特徴で、チーズシュトルクリの繊細な風味を邪魔せず、優しく寄り添うことができます。
シュトルクリのクリーミーな食感をより楽しむには、ワインの酸味やミネラル感が重要な役割を果たします。ワインを選ぶ際には、アタックは穏やかで、アフターに爽やかさが残るものを選ぶと良いでしょう。特にポドラウィエ地方のシルヴァーナーは、ボトリティス (貴腐菌) の影響を受けたものを選ぶなら、より複雑な風味が増し、チーズとの相性が向上します。
リンゴシュトルクリ
同じシュトルクリでも、リンゴとシナモンを詰めたリンゴシュトルクリは、デザートとしても楽しまれています。
まず相性が良いのは、プリモルスカ産ベリ・ピノ(Beli Pinot)です。ベリ・ピノは穏やかな酸味と繊細なアロマが特徴の白ワインで、リンゴシュトルクリの風味を邪魔することなく、全体のバランスを整えてくれます。またベリ・ピノの持つクリーミーなテクスチャーが、シュトルクリの優しい食感に寄り添います。
次にポドラウイエ産ルメニマスカットも欠かせません。ポドラウイエ地方のルメニマスカットは、マスカットの華やかな香りと、爽やかな甘さが特徴で、リンゴの風味とシナモンのスパイシーさを引き立てつつ、後味をすっきりとさせてくれます。
リンゴシュトルクリに合うワインを選ぶ際には、シュトルクリが持つ甘さと、ワインが持つ甘さとのバランスを重視しましょう。残糖度が高すぎると、互いに重くなりすぎてしまい、軽快さが損なわれます。それで、甘さと酸味のバランスが良いワインを選びましょう。酸味が十分に保たれている、若いヴィンテージのものを選ぶと良いでしょう。
馬肉料理
リュブリャナでは、馬肉を使った料理が古くから親しまれています。馬肉はステーキやソーセージなど、様々な調理法で提供されています。
馬肉料理は、プリモルスカ産レフォシュクとの相性が最高です。レフォシュクは、カシスやブラックベリーのような黒い果実の香りと、しっかりとしたタンニンが特徴の赤ワインで、馬肉の野性味あふれる風味を、レフォシュクの力強いタンニンが引き締め、より深い味わいへと昇華させてくれます。
またポサウィエ産モドラ・フランキンジャとの相性も芳しいと言えます。モドラ・フランキンジャは、スパイシーな香りとフレッシュな酸味が特徴のため、馬肉の旨味を引き立てつつ、後味をさっぱりとさせる効果もあります。
馬肉に合うワインを選ぶ際には、ワインが持つ鉄分とタンニンの相性を考量しましょう。ボディがしっかりしていて、タンニンが豊富なワインを選ぶならば、肉の臭みを抑えつつ、旨味を引き出すことができます。特にレフォシュクを選ぶ際には、樽熟成されたものを選ぶと、より複雑な風味と滑らかなタンニンが加わって、馬肉との相性が向上するでしょう。
リュブリャナ風スープ
リュブリャナはスープ料理も有名で、リチェットと呼ばれる豆や野菜が入ったスープや、ゴボヴァ・ユハと呼ばれる野生のキノコを使った濃厚なキノコスープが人気です。
まずスープとの相性を考えるなら、プリモルスカ地方のソーヴィニヨン・ブランでしょう。この地方のソーヴィニョン・ブランは、ハーブや柑橘系の爽やかな香りに加え、豊かなミネラルと酸味が特徴で、スープの旨味を引き立てつつ、後味をさっぱりとさせてくれます。スープに入っている野菜の風味とも調和すること間違いなしです。
さらにポドラウィエ産シポンも欠かせません。シポンはハーブや白い花の香りと、爽やかな酸味が特徴のワインで、スープの繊細な風味を邪魔することなく、優しく包み込んでくれます。
リュブリャナ風スープとワインの相性を考える際には、スープの塩味と、ワインの酸味のバランスを考えることが大切です。辛口のワインを選ぶことで、スープの旨味を引き立てながら、後味をすっきりとさせることができます。特にシポンを選ぶ際は、スキンコンタクトを行ったものを選ぶと、より複雑な風味とコクが加わって、スープとの相性が向上するでしょう。
マリボル(Maribor) ワインと美食の都
マリボルは、スロベニア第2の都市であり、ヨーロッパ最古のブドウの木があることでも知られています。ワイン造りの歴史は非常に長く、街の周辺では高品質なワインが生産されています。
マリボル風グラーシュ
牛肉や玉ねぎ、パプリカなどを煮込んだ濃厚なシチューで、マリボルの名物料理です。寒さの厳しいマリボルの冬には欠かせない一品です。
マリボル風グラーシュは、ポドラウイエ産ブラウフレンキッシュとの相性が抜群です。この地方のブラウフレンキッシュは、ブラックチェリーやスパイスの香りに、しっかりとしたタンニンが加わっているのが特徴です。グラーシュの濃厚な味わいを引き締め、より複雑な風味へと導いてくれるでしょう。
またポサウィエ産モドラ・フランキンジャも欠かせません。ポサウィエ地方で造られるモドラ・フラキンジャは、ポドラウイエ産よりもやや軽めで、フレッシュな酸味が特徴です。グラーシュのコクとよく調和し、後味をすっきりとさせてくれます。
グラーシュとの相性の良いワインを考える際には、濃厚な味わいに負けない、ボディのしっかりとした赤ワインを選ぶべきです。タンニンが豊富でスパイスの香りを持つワインを選ぶなら、グラーシュの風味をさらに引き立ててくれるでしょう。
ポホルスカ
マリボル近郊のポホリェ山が発祥のポホルスカは、ふわふわのオムレツに、ベリーソースやチョコレートソースをかけた贅沢なデザートです。卵の優しい甘さに、ソースの濃厚さが組み合わさった、心温まる味わいの一品です。
ポホルスカと相性が良いのは、ポドラウイエ産トラミネッツです。トラミネッツはゲヴュルツトラミネールと同類の品種で、バラやライチのような華やかな香りと、とろりとした甘みを特徴として持っています。「デザートと甘口ワイン」という、王道のマリアージュを楽しむことができるでしょう。
トラミネッツは非常に華やかな香りを持っているため、ベリーソースやチョコレートソースの香りと見事に調和します。ワインの香りはデザートの甘さと共鳴し、幸福感を高めてくれます。またトラミネッツの持つスパイシーなニュアンスは、デザートにアクセントを加え、単調さを防いでくれます。まるで花束のような香りに包まれる、優雅なマリアージュを楽しめること間違いなしです。
プレクムルスカ・ギバニツァ
マリボル周辺のプレクムリェ地方の伝統的なパイで、ポピーシードやカッテージチーズ、リンゴ、そしてクルミなどを何層にも重ねて焼き上げた料理です。
プレクムルスカ・ギバニツァには、ポドラウイエ産貴腐ワインがぴったりです。この地方の貴腐ワインは、蜂蜜やドライアプリコットの香りと、凝縮された甘さが特徴で、ギバニツァの複雑な風味と甘さを引き立て、至福のデザート体験をもたらしてくれます。
またポドラウイエ産ルメニマスカットとの相性も見逃せません。貴腐ワインの代わりに甘口のルメニマスカットを選ぶならば、マスカットの華やかな香りと爽やかな甘さが、ギバニツァの風味を引き立ててくれます。
ギバニツァは複雑な風味を持っているため、それに負けない甘味と酸味を持つワインを選ぶことが重要です。熟成したワインを選ぶなら、その香りがギバニツァの風味をさらに引き立てます。特に貴腐ワインを選ぶ際は、残糖度と酸度のバランスに注意して、甘すぎず酸味も十分に保たれているものを選ぶならば、最高のマリアージュをたのしむことができるでしょう。
コペル(Koper) アドリア海の港町
コペルは、スロベニアのアドリア海沿岸に位置する港町で、温暖な気候と肥沃な土壌に恵まれ、オリーブやブドウの栽培が盛んなことでも知られています。
シーフード料理
コペルは新鮮な魚介類を使った料理が豊富で、グリルやフライ、リゾットなど、様々な調理法で楽しまれています。
まずシーフードとの相性が良いワインとして、プリモルスカ産マルヴァジアは外せません。マルヴァジアはフレッシュな柑橘系の香りと、ほのかな塩味を伴うミネラル感が特徴で、シーフードの繊細な風味を引き立て、口の中で爽やかなハーモニーを奏でてくれます。
またプリモルスカ産ヴィトフスカもお勧めです。プリモルスカ地方のヴィトフスカは、ヨード香やハーブの香りに加えて、シャープな酸味が特徴のワインで、シーフードの臭みを消し、後味をさっぱりとしてくれます。
ワインを選ぶ際には、シーフードの繊細な風味を邪魔しない、ドライでミネラル感のある白ワインを選ぶと良いでしょう。ワインの酸味が、シーフードの旨味を引き立ててくれます。特にマルヴァジアを選ぶ際は、アンフォラ (素焼きの壺) で熟成されたものを選ぶと、より複雑な風味と奥行きが加わり、シーフードとの相性が向上します。
イストリア風フュジ
イストリア地方の伝統的なパスタで、特徴的な細長い形状を持ち、様々なソースと合わせられます。
フュジと相性が良いのは、プリモルスカ産レフォシュク (Refošk)です。レフォシュクは、カシスやブラックベリーのような黒い果実の香りと、しっかりとしたタンニンが特徴のワインで、トマトソースやミートソースのコクと調和し、より深い味わいへと導いてくれます。
またプリモルスカ産カベルネ・ソーヴィニヨン (Cabernet Sauvignon)を選ぶのも良いでしょう。カシスや杉の香りと、力強いタンニンが特徴のため、濃厚なソースと合わせることで、互いの風味を引き上げてくれます。
ワインを選ぶ際には、パスタソースのコクと、ワインのタンニンの相性を考えましょう。多くの場合、ミディアムボディの赤ワインを選ぶならば、ソースとのバランスの良い味わいを楽しむことができます。またレフォシュクを選ぶ際は、長期熟成されたものを選ぶなら、タンニンがよりまろやかになり、パスタとの相性も向上するでしょう。
バカラ
干しダラを牛乳で煮込んだ料理で、特にクリスマスや復活祭などの祝祭日に食される伝統的な食材です。乾燥タラは保存性が高く、長期間の保存が可能なため、歴史的にも重要な役割を果たしてきました。
バカラと相性が良いのは、プリモルスカ産フリウラーノです。この白ワインは、ハーブや白い花のような香り、そして特徴的な苦味が特徴で、バカラの塩気とタラの風味を複雑なものにし、ニンニクの風味とも調和します。フリウラーノの持つ苦味がバカラの風味に奥行きを与え、ミネラル感が料理全体を引き締めてくれます。トマトベースのバカラにもよく合うでしょう。
バカラとワインを一緒に飲む際には、ワインは6~8℃まで良く冷やし、ワインの持つ苦味とミネラル感を最大限に引き出すならば、素晴らしいマリアージュを楽しむことができるでしょう。
クラーニ (Kranj) アルプスの麓の古都
クラーニは、スロベニアの北西部、アルプスの麓に位置する古都で、山々に囲まれた美しい景観が魅力です。ハイキングやスキーなどのアクティビティが楽しめる場所としても知られています。
カルニオラ風ソーセージ (クランスカ・クロバサ)
クラーニ周辺のカルニオラ地方の伝統的なソーセージで、豚肉や塩、胡椒を用いて作られ、燻製されています。
このソーセージと相性が良いのは、プリモルスカ産メルローです。この地方のメルローは、プラムやチェリーの香りと、柔らかなタンニンが特徴で、ソーセージの風味を引き立て、口の中で優しいハーモニーを奏でてくれます。
またポサウィエ産ツヴィチェクも良いでしょう。ツヴィチェクは赤ワインと白ワインの品種をブレンドした、軽快な酸味と果実味が特徴のワインで、ソーセージの脂っぽさを和らげ、後味をさっぱりとさせてくれます。
ワインを選ぶ際には、ソーセージの風味と、ワインの果実味のバランスを考慮しましょう。ミディアムボディで、タンニンが穏やかな赤ワインを選ぶことで、ソーセージの旨味を引き出すことができます。特にメルローを選ぶ際は、フレンチオークで熟成されたものを選ぶと、より複雑な風味と滑らかなタンニンが加わり、ソーセージとの相性が向上します。
まとめ
スロベニア料理とスロベニアワインのマリアージュは、その多様なテロワールと、隣接する国々の影響を受けた食文化が生み出した、豊かな食体験を提供してくれます。ぜひ様々なスロベニア料理とスロベニアワインを試して、自分だけのお気に入りのマリアージュを見つけてみてください。豊かな食と素晴らしいワインを通して、最高のスロベニアを味わうことができるでしょう。